小さな王女のおはなし

「星の王女さま」を観てきました。

折角なので、感想を少しばかり書きたいと思います。 ネタバレするのでお気をつけ下さい。あと特に深い事とかは書きませんので緩く読んでくださいませ。

f:id:rishanyaaan:20180414144704j:image

ザックリしたあらすじは伊藤理々杏演じる星の王女さまと梅澤美波演じる不時着した宇宙飛行士リンドバーグが星を回って、故障した飛行機を直す部品を集める話です。原作「星の王子さま」では6つの星を巡りますが、こちらの作品では5つの星を巡りました。各星々にメンバー1人がいる、という形です。

 

一番最初の星は「偽装キラキラ女子の星」

阪口珠美演じるさなえがいます。さなえは銀河ネットというところで常にキラキラ投稿をしている夢見がちな女の子、いわばインスタ女子なのですが、実際は何もない星で嘘の投稿ばかり。ピンクの衣装で可愛らしいさなえちゃんはいつも自撮りをしています。原作で言うならば自分の体面を保つことに必死な王様だと思いました。そんな彼女に王女さまは「写真を撮らないと、その楽しかった思い出は無かったことになってしまうの?」と尋ねます。銀河ネットにあげなくても、写真に撮らなくても、キラキラしていたことに変わりはないと。これは現代のSNS女子の痛いところを突いてるなぁ、と思いました。珠美ちゃんもいい感じに自己中というか、「いるいる」って感じの女子を演じててよかったです。

 

2つ目の星は「キャリアウーマンの星」

中村麗乃演じるナオミがいます。ナオミはバリバリ働いて、岩盤浴して、貯金して、憧れる女性像なのですが実際は孤独な少女でした。現実主義なので夢見がちなさなえとは対立してばかり。原作で言うならば常に勘定をしていた実業家に近いかもしれません。自分に投資していながら、何も手に入れていない。そんな彼女とラップバトルなんかしながらも仲良くなることで、王女さまたちは彼女の孤独を埋めてあげました。麗乃ちゃんの大人っぽさには驚きますね。あとこれは後のシーンですがマヤの星での麗乃ちゃんの問いかける演技は声がスッと入ってきて心地良かったです。「世話焼き」と言われていましたが、私はキツそうに見えて実は優しいナオミが結構好きです。

 

3つ目の星は「流れ作業の星」

佐藤楓演じる紀伊国坂がいます。紀伊国坂は石にヒビが入っていないか、ただひたすらチェックしています。感情を全て捨てて、毎日食事をし、仕事をし、寝て起きるだけの生活を繰り返す。心を捨てなければやってこれなかったのです。原作で言うならば小さな星で忙しなく仕事をし続ける点燈夫でしょう。そんな彼女には過去に女優になりたいという夢があって、向いていなかったので辞めてしまいました。殻に篭って、全てを無かったことにしてしまった彼女に手を差し伸べる王女さまたち。棒読みと言われていた楓ちゃんが感情を露わにしたシーンには驚きました(心を捨てていたところはヤバイくらい棒読みなのも良い)またこのシーンでナオミが「寂しいって言ったら寂しくなっちゃうでしょ。これが幸せかどうか決めるのは本人なの」と言うのですが、これ、沁みましたね。

 

4つ目の星は「潔癖症の星」

吉田綾乃クリスティー演じるマヤがいます。マヤは超潔癖症。飛行機の部品も捨ててしまっていました。しかし訳あって大嫌いなゴミ捨て場に取りに戻ることに。ここでもまたナオミが「壁を乗り越えてみよう」と声を掛けます。これを聞いた時に、これは原作で言うならば机の上だけの地理学者なのでは、と思いました。(次の星の子もそれに近いのですが)あやてぃーの優しそうな感じが出ていて、神経質というよりは綺麗好きという感じでしたね。

 

最後の星は「ヲタクの星」

向井葉月演じるどれみがいます。どれみはヲタクで漫画やアニメが好き。引き篭もりで、イラストの評価はネットでは良いですが、学校ではからきしで1軍2軍の子達に憧れています。こっちも原作で言うならばマヤと同様に地理学者かもしれません。「外の世界」を知らないとやはり井の中の蛙になってしまうんですよね。広くて深い知識を持っている故にうまく周りに溶け込めない、オドオドとしたキャラの濃い話し方で葉月ちゃんにしか出来ない役でした。しっかり作り込まれていて、台詞がない時もちゃんと演技していました。

 

さて、もう1人、大事なキャラクターがいます。

岩本蓮加演じるバラです。これは原作同様、王女さまが星に残してきた大事な人。ちょっぴりワガママで可愛くて良い香りのするバラをれんたんは少し背伸びをして演じていた気がします。手足が長いのでめちゃくちゃ綺麗。地球で見た多くのバラと、王女さまが大切に水を上げ、風邪を防ぎ、毒キノコ(原作でいうバオバブ)から守ったバラは違うのだとちゃんと気づけてよかったなぁと思います。「君が君のバラのために失った時間こそが、君のバラをかけがえのないものにしているんだよ」ってわけだ。

f:id:rishanyaaan:20180414165326j:image

長々と話してきましたが、ここからがメイン。

とにかく出ずっぱりだった伊藤理々杏梅澤美波の感想です。原作と一緒で基本王女さまとリンドバーグが話を進めていきます。とにかく台詞が多くて、大変だったんじゃないかなぁ。

梅澤美波演じるリンドバーグは、語り手兼ツッコミ係。常に話してるわけだけど、梅ちゃん舞台映えするなぁと思いました。身長も高いし台詞もスラスラ話すし。一番まともな役って一番大変だったりしますよね、凄い。劇中も頼りになるなぁ、なんて思いながら見ていました。

 

そして、今回の団長、伊藤理々杏

この人やっぱり予想通り凄いね。僕の衝動のイントロ見たときから薄々気づいてはいたけど、役にグンと入り込めるタイプ。星の王女さまは基本お茶目で楽しいことが大好きなのですが、どこか儚さがあって不意に物事の芯をつくことを言う。壊れやすそうで壊れない稀有な存在なわけです。伊藤理々杏はそれが似合う。台詞が無い時の表情、台詞を言う直前の感情の作り方、席が近かったのもあり見応えがありました。彼女に少し足りないと言われている子供らしさ、色々言われますが今回の舞台で少し見方が変わりました(演技としての子供らしさはある)私は思っているよりも彼女の「あざとさ」が好きなのかもしれません。

f:id:rishanyaaan:20180414171728j:image

3期生8人と演者含め16人の皆さま、あと7公演怪我なく思う存分やってもらえればと思います。私ももう一度「星の王子さま」を読み返そうっと。

" On ne voit bien qu'avec le coeur. L'essentiel est invisible pour les yeux. "